公明党神奈川県議団

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神奈川県のエネルギー政策について

小野寺 慎一郎 議員(横浜市旭区)

(1) 政策手法の変更について

当初の「かながわソーラーバンク構想」は、政策実現のカギを握る「全量買取制度」が、再生可能エネルギー特別措置法案においても当初から住宅用を含める予定になく、そもそもの前提に無理があったのではないかと指摘する声もある。
「かながわソーラープロジェクト研究会」においても多くの課題が指摘され、実現可能性が低いことから具体的な検討が進んでおらず、将来的な選択肢の一つとして整理されたにとどまっているようである。
今は、全量買取制度を前提としない、既存のローン制度を発展させたシナリオによる検討を中心として議論が進んでいると承知している。
太陽光パネルの設置に際し、設置者である県民に負担を求めないという、知事のソーラーバンク構想が県内外に与えた影響は大変に大きく、公約にうたった目玉政策の内容を大きく変えるのであれば、県民が納得できる説明が必要と考える。一般家庭が全量買取制度の対象外となる公算が大きいと見られている中で、当初の構想を実現可能と考えた根拠や、政策目標達成に至る手法を変更することについて、知事自身の言葉で県民や議会に対しメッセージを発することが、今後の施策への信頼につながると考えるが、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

小野寺議員のご質問に順次お答えしてまいります。
はじめに、神奈川のエネルギー政策について2点お尋ねがありました。
まず、「かながわソーラーバンク構想」の政策手法の変更等に関する県民や議会への説明についてです。
「ソーラーバンク構想」は、ソーラーパネルを圧倒的なスピードで住宅へ普及させるために、自己負担なしで設置できる新たな仕組みを実現しようと提唱してきたものです。
この仕組みを実現するには、ソーラーパネル設置後に、売電収入により設置費用が確実に回収できることが必要であり、そのためには現行の余剰買取から全量買取へ移行させることが不可欠と当初は考えておりました。
太陽光発電の新たな買取制度のあり方を検討した経済産業省の「買取制度小委員会」の報告では、住宅用太陽光発電は「当面は余剰買取とすることが適当」としておりますが、これは東日本大震災に伴う原発事故が発生する前の議論でありました。
私は、3月11日以降、電力需給が逼迫する危機的な状況に直面した中で、新たな買取制度のあり方が検討されるべきと考え、国に対して全量買取の適用や買取期間の延長を強く要請してまいりました。
しかし、残念ながら依然として余剰買取の方向で検討が進められておりますので、今後は、国に期待しているだけではなく、県としてできることを検討していかなければなりません。
そこで、ソーラーパネルの設置費用を引き下げることにより、自己負担をできる限り軽減する方策を講じることといたしました。

このため、これまでの住宅用設置補助を継続するとともに、金融機関による低利ソーラーローンの提供に加え、パネルの一括発注による価格低下を実現するソーラーバンクシステムを年度内にスタートさせたいと考えております。
また、複数の住宅をまとめることで、全量買取の対象規模となるよう、国に対して柔軟な運用を働きかけてまいります。
こうしたソーラーバンク構想のこれまでの検討状況については、県議会にご報告するとともに、逐次ホームページへの掲載やメディアを通じて、県民の皆さんへお知らせしてまいりました。
今後、ソーラーバンクシステムをスタートする際には、改めて検討の経緯、システムの目的と内容を県民や議会の皆さんにしっかりとご説明し、その円滑な実施について、ご理解とご支援をいただくよう努めてまいります。

(2) 施策推進による県民の負担とメリットについて

知事は「かながわスマートエネルギー構想」を新たに掲げたが、自然エネルギーのような将来的に市場が巨大化する先進分野に対し、自治体が先行的に公金による投資を行うときは、どういう施策に、どのタイミングで、どれ位の金額を投入するか、大変に難しい判断に迫られる。また、エネルギー政策のように、国若しくは電力会社のエリアといった広域的に進める政策にあっては、一つの県が及ぼす影響は極めて限定的である。投資によって県民負担は増大したものの、それに見合う効果がなかったということは、絶対に避けなければならない。
そこで、「かながわスマートエネルギー構想」に基づく施策の推進によって県民全体が享受し得る、神奈川県民固有のメリットはどのようなものなのか、また、同構想の推進によって県民に求められる負担については、どのように考えるか、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

次に、「かながわスマートエネルギー構想」の推進による県民のメリットと負担についてのお尋ねをいただきました。
スマートエネルギー構想は、安全・安心なエネルギーを安定的に確保することを目的に、再生可能エネルギーによる「創エネ」、電力のピークカットを図る「省エネ」、ピークシフトを図る「蓄エネ」の取組を総合的に進め、中長期的に効率的な電力需給の実現を目指す、新たなエネルギー政策であります。
このうち、「創エネ」の中心的役割を担う太陽光発電の普及に向けた「かながわソーラーバンク構想」では、リーズナブルな価格で安心して設置できる仕組み、設置後のメンテナンスなどの不安感や負担感をできる限り軽減する仕組みを目指しております。
本県独自のこうした仕組みの実現により、県民にとっては、太陽光発電をより安心して設置できる環境が整いますので、このことは、他県にはない大きなメリットになるものと考えております。
また、スマートエネルギー構想では、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、効率的な電力利用を目指しておりますので、昼間に発電した電力を夜間に利用したり、万が一の災害発生時にも自前の電力が利用できるなど、県民生活にとって、便利さと安心感を与えるものになると考えています。
さらに、この構想を推進して行く中では、太陽光発電の設置促進により、まちづくりに関わる住宅や電気自動車などの関連産業でビジネスチャンスや雇用の拡大など、幅広い波及効果が見込まれます。
現在、申請の準備を進めている総合特区制度などによる国の支援や、新たに市民ファンドを導入した「屋根貸し」方式による公共施設や民間施設への設置促進などに積極的に取り組むことにより、できる限り県の財政負担とならないように、努めてまいります。

要望

太陽光発電の促進につきましては、いわゆる「シナリオⅡ」と、現在、進めている「シナリオⅠ」に基づくものとの関係は理解させていただきました。
ただ、施策の推進によって、県民全体に及ぶ利益ということについては、私の前の様々な質問に対しても知事がお答えされておりますけれども、県内産業の発展に直結するということでありますが、そんなに簡単なものでないだろうというふうに思います。
つまり太陽光パネルが県内で普及することによって、それが県内の産業を活性化するというそのストーリー、もう少し細かくお聞きしなければならないのかなと思いますが、その点は常任委員会での議論に譲りたいというふうに思っています。
捕らぬ狸の皮算用にならないように、しっかり県内への経済波及というものも念頭に置いて進めていかなければならないと思っています。
一つ知事のお話の中で、ぜひそのとおりやっていただきたいなと思うのは、こういった新しい分野に県が自治体として関わっていくときに、いわゆる公金をどんどん投入していくというよりは、むしろ民間の力、民間の資金を呼び込む、そういうスキームをしっかりと作らなくてはいけないのかなと。自治体がこういった新しい事業に乗り出していくときというのは、金額が少なくても効果が全然上がらない、あるいは金額が多くなっていくと今度、逆にリスクがどんどん増えていくということでありますので、実は知事が最初に進めようとされていた「シナリオⅡ」は、若干心配していたところでもあるのです。
大変おもしろい組み立てだと思ったのですけれども、その分、本当にこれで県のリスクというものがないのだろうか、そういった心配もありましたので、ぜひ県民負担、リスクに繋がるようなことを避けながら事業を進めていっていただきたいというふうに思います。

要望

最後に意見を一つ申し上げて、私の発言を締めくくりたいというふうに思います。
知事はジャーナリズムの出身でございますから、以前から地方議会の形骸化ということについては耳にしていらっしゃるというふうに思います。
私はその大きな原因の一つというのが、いわゆる首長側、県で言えば知事側から議会に対する情報開示が不十分なことにあるのではないかというふうに考えています。
新聞記事の引用で甚だ恐縮でございますけれども、知事は今回、具体的な施策は今後、議会の本会議や委員会で明らかにすると、いわゆる太陽光発電政策について記者に語ったそうでありますけれども、もちろんこれ、程度の問題もありますけれども、私はそれでは質の高い議論というのは望むべくもないのだというふうに思います。
今回の知事の提案説明、初日に伺いましたけれども、なんと言ったらいいのか、最も知事が丁寧に説明すべき太陽光発電のところを見ても、まさに見出しだけという感じです。
これを基にどうやって、中身の濃い議論をしていったらいいのかというのを大変に私たちは悩むわけであります。
知事は質問されれば、それに応じて答えていくというようなつもりで記者におっしゃったのだと思います。
これから本会議や委員会で明らかにしていくと。
でも、委員会は知事は出席されませんから、できるだけこの本会議で実りのある議論をしていかなくてはいけないのだというふうに私は思っています。
本会議というのは、私は一方的に行政側、知事の側から説明を聞く場所ではないというふうに思っています。
私たちは知事にインタビューしているわけではないのですね。
対等に議論をする場だというふうに私は思っているわけです。
ある意味で、その対等な議論をするためには、知事にとってみると議会との論戦に臨む際には十分な情報開示というものを私たち議会サイドに対して行っていただきたいというふうに思います。
今回の、残念ながらこの知事の提案説明、これは私だけの感想ではないというふうに思います。
これは情報開示としては明らかに不十分であるというふうに思っていますので、今後の知事と議会の信頼関係を築いていくために、長いお付き合いになるわけですから、それを築いていくために、今後しっかりと情報開示ということに気を配って、この議会に臨んでいただきたいというふうに要望いたしまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。